整形外科を開業・経営する上で重要なポイント

「人が存在する限りクリニック経営は傾かない」そう思われていたのは過去の話といっても良いでしょう。現代は常に経営について考え、未来を見極める力が必要です。特に整形外科は自己資金が少なくて済む事から多くの方が経営に参入しています。しかし開業したのはいいが、結局のところうまく利益が得られずに廃業する件数が多いのも事実です。これから参入する場合、廃業せずに利益を確保する為には何を確認すべきでしょうか?そのポイントをいくつか紹介しています。
整形外科の特徴
クリニックの中でも整形外科は他とは毛色が違い、外傷だけでは無く様々な疾患で患者が訪れます。また傷が治った場合も、状況によりリハビリが必要なので一度通院すると長くなることが多いのも特徴です。当然、リハビリが必要になると広い間取りがなければリハビリを実施出来ません。
また1件辺りの単価が低く、多くの患者を確保しないと利益に繋がりにくい事も想定され、これらを踏まえた上で経営する必要があり、ケースによっては廃業に追い込まれてしまう可能性もあります。1つのデータによると寒い時期は患者が減る為、シーズンによって患者の調整をしなければならないのも整形外科の特徴です。
外来患者数は1日平均40名で、その際の利益は月額に換算すると525万円相当です。診療所の規模や方針にも寄りますが看護師1名、事務スタッフ2名で都心に立地している場合、利益は190万円程度になります。年商にすると2300万円程度ですが、税金や借入金を加味すると半分程度が純利益です。利益を得る為にはまず患者数を増やす必要がありますが、これにも多くのハードルがあります。
1日40人の患者が来院する場合、診察の準備や検査結果の確認を含むと1人当たりの診察時間は5分前後です。果たしてこの時間で患者の話を聞き入れた上で治療は出来るのでしょうか。この様に整形外科は掘り下げて初めて分かる様々な特徴があります。特徴であり同時に問題点でもあるので、このハードルを如何にうまく飛び越えられるかがクリニック経営のカギです。
整形外科は人権費が大事!?
前項目で整形外科の平均利益が年間2000万円程度と紹介しました。しかし、これはあくまでも1日40名の患者数それに対応出来る看護師が1名、事務スタッフが2名体制の場合です。患者数が増えれば当然看護師・医師が1名ずつでは足りないので人員を増やす必要があります。
しかしここで考えなければならないのが、「本当に人員を増やしても良いのか?」と言うことです。整形外科を含むクリニックでは患者数は直接的な利益に繋がります。同時に人員を増やす事で人件費が加算されるので、オーバーワークにならない程度の良い塩梅を探りながら経営をしていくことが求められます。
無駄に人件費だけを増やさずに安定した患者数を得る為には、既存の看護師やスタッフの研修を怠らない事です。定期的な研修・勉強会を開き最新の医療技術を学ぶだけでは無く、全てのスタッフが別の業務に取り掛かれる様に業務を細分化すると人件費よりも利益が上回りやすくなります。
整形外科の開業のポイント
うまくクリニック経営を成功させるには、開業時からいくつかのポイントに気をつける必要があります。まず契約する物件です。賃料だけを見ていると失敗する要因になるので注意して下さい。低周波治療機や干渉波治療器といった大きな医療設備が必要になる事から、院内導線の確保に必要だと考えている広さより少し広めの物件にすると良いです。
続いては立地場所ですが駅から近くアクセスに便利な場所、あるいは診察圏が広くなり様々な設備を導入出来る郊外が良いでしょう。どちらにしても必ず院内導線を明確する事が重要です。院内導線の悪いクリニックは患者数増加が難しく、且つ客足が遠のきやすいので経営のネックになります。外傷を含め身体の不自由な患者が多く来院する可能性を踏まえて、出来るだけバリアフリーに考慮すると良いでしょう。
開業当初から多くの設備導入する必要は無く、当初であれば最低限の医療機器だけで問題ありません。開業当初は患者確保が第一になり、稼働率の低い医療機器は足かせになります。整形外科開業の際に必要な資金は1億円程度と言われていますが、その半分は医療設備に消えていくほど設備は大切です。しかしこれらの導入タイミングを誤ると経営が傾く恐れがあります。
整形外科は自己資金の低さから、多くの方が参入している診療科目ですが、長期通院が必要な点がネックです。この弱みをどう強みに切り替えていくかもクリニック開業の重要なポイントになります。長期通院で患者がモチベーションを高く持ってもらう為にはコミュニケーションを重視することも大切です。、また、出来るだけ希望に沿った治療を提供する事で、変化を感じやすくなるといった方法を取り込むのも良いでしょう。その為にはまず患者のニーズを押さえる必要があり、開業前に入念なターゲッティングが必要となります。
そして忘れてはいけないのが集客です。クリニックは他の業界と同じく立地しているだけでは患者は来ません。広告を出すのは限られているので、WEBやSNSを使って集客するのがポピュラーです。どんな治療をしているのか?いつ営業しているのか?など基本的な情報だけでは無く、患者が知りたい情報を公開していくと良いでしょう。地道な作業ですがコツコツを集客していけば安定した患者確保に繋がり、運営が安定します。
開業後の経営のポイントは?
どんな商売でも同じ事を言えますが他院と差別化を図る事は、経営成功のコツです。整形外科は他院と比べて範囲が広くしっかりと戦略を練り、且つビジョンを明確にしなければなりません。
整形外科は総額1億程度必要ですが、実際開業しているクリニックではそれよりも多くの費用が発生しています。これは無駄な設備投資が多い傾向にあるからです。ベッド型マッサージ機は採算が取れにくく、元を取るまでに数年間かかります。その設備を置く為にスペースも必要で、そのスペースは賃料として発生しているので一見小さな出費ですがランニングコストとして考えるとマイナスです。経営成功のコツは「モノ」では無く「ヒト」に投資をすると良いでしょう。
1名の理学療法士を雇い研修を行い、リハビリテーション実施単位を取得した場合1名につき18単位で取得可能です。理学療法士がいる整形外科は信頼度が高いだけでは無く、実際に高い精度の治療が期待出来ます。導入した事で何が起こるのか?あるいはどんな効果が期待出来るのかをイメージしながら経営していくと大きな失敗はありません。
資金を含む経営については、コンサルタントに相談しながら運用していくのも良い方法といえます。
まとめ
整形外科は精神科や内科と同様に人気の高い診療科目です。総資金は1億程度、自己資金に関しては1~2000万円ほどで開業出来るハードルの低さが人気を呼んでいます。しかし既にレッドオーシャンの為、ビジョンを明確にしてクリニック経営していかないと大きく失敗する事も多いです。
立地条件や契約も大切ですが長く安定した利益を出す為には人件費のコントロール、またはモノでは無くヒトへの投資が必要になります。もちろん集客や患者とのコミュニケーションを絶やしてはいけません。