電子カルテを含むカルテの保管期間はどのくらい?また処分方法は?

医療機関で利用されているカルテには保存義務があります。その義務を破るとペナルティを科せられて、罰金が発生するケースがあります。では、紙ベースのタイプ、電子タイプについては保管期間に違いはあるのでしょうか。他にも処方箋、レントゲン写真など医療機関で保存しておくべきものお伝えします。また保管期間を終えた場合の処分はどのように行う必要があるのでしょうか。導入予定のオーナーは参考にして下さい。

医療記録(カルテ)の保存義務と開示について

そもそもカルテは医療記録の一種で患者の状態や、治療内容について細かに記入されている書類です。近年では電子カルテと言う、紙ベースではなくデータに変換したものがメインになりつつあるのが現状です。

これらのカルテは利用したらすぐに処分するのではなく、5年間の保存義務があります。この5年は診療が終了してからの5年になるので、治療を継続している間の処分は認められていません。カルテ以外のレントゲン写真、処方箋・透析記録などは3年の保存義務があります。これを無視して処分してしまうとペナルティが科せられ、50万円以下の罰金を支払わなければなりません。他にも特定生物由来製品と言われる、人免疫グロブリン・新鮮凍結人血奬などの感染症のリスクがゼロではない物の使用記録は20年間の保管期間が設けられています。これは仮に感染症が発生した場合、感染拡大防止を迅速に行う為、また原因を究明する為です。保管期間については1948年に制定された医師法24条に明記されています。

ちなみにこれらのカルテは労基署の検査、あるいは本人から希望があった場合は開示しなければなりません。前者は税金の計算を正しく行っているかの調査、後者は個人情報保護法によって決められています。時折カルテの開示を嫌がる医師もいますが、それは間違った対応です。開示の理由を告げる必要もありませんし、コピーを要求しても問題ありません。開示手数料の発行は認められていますが、明確な費用についての取り決めがないため、病院側がその料金を決めています。しかし「合理的と認められる範囲において」と言う取り決めがある事から、支払えないほどの高額にはならないので安心して下さい。

仮に治療を受けていた当人が亡くなった場合に、これらは適用外となるので病院側にはカルテの開示義務はありません。しかし厚生労働省のガイドラインではカルテの開示請求に応じる様に明記されているので、実際は難しい判断基準になります。これらの取り決めやガイドラインは2003年9月12日に制定されました。

カルテのデータ化についてはどのような形でやるの?

新規で医療機関を立ち上げて、初めからシステムを導入するのなら何の問題もありません。しかしこれまで紙ベースのカルテを使っていて、今から電子タイプに切り替える場合はこれまでのカルテをデータ化しなければならないのです。

データ化の方法はいくつかありますが、フラットベット式・オートフィード式・スタンド式の3つが主流です。フラットベット式は1枚ずつ挟んでスキャンする昔からの方法で、ズレが無く確実にデータ化出来る方法ですが時間・手間がかかるのがネックでした。近年はスキャナの機能も向上しスピード・画質共にあがっているので複数枚を順番に流すオートフィード式が人気です。1分間に3~50枚処理するので時間もかかりません。スタンド式はスキャナ自体が安価で導入しやすいのがメリットですが、ページをめくりながら行うのでコツを掴んでいないとズレる可能性もがあります。

専門業者へ依頼する方法もありますが費用発生だけでは無くカルテというプライバシーの塊を預けるので、業者選びには注意が必要です。処分と同じくPマーク・法人対応している業者に依頼するとリスクが少なくて済みます。

基本的にデータ化したカルテは保管期間内、保管期間外に分けて保存するのがルールです。そうでないとすぐにクラウドの容量がパンクしてしまうので、保管期間外のものに関しては圧縮して保管しておくと良いでしょう。医療情報システムの安全管理に関するガイドラインによると保管期間内のカルテはスキャナで取り込む際は汎用性が高い形式で残し、且つ電子化を患者に告知する必要があります。実施計画書や電子署名、外部監査人が必須で、破棄の際は当然個人情報の保護が必要です。

保管期間外の場合も汎用性が高い形式で残す事は同様です。破棄する際には個人情報の保護のみ必要となります。診察終了から5年以上経過したら処分しても問題ありませんが、すぐに破棄するのはおすすめしません。薬害問題や医療ミスにより裁判となった場合の損害賠償請求権の時効は20年と定められており、カルテが無いと医療機関側が不利な状況に立たされるケースもあります。よって日本医師会が発行している2016年版医師の職業倫理指針第3版には、出来る限りカルテは永久保存しておく事を勧めると記されています。

データ化後のカルテの破棄方法

データ化した後の紙ベースのカルテを処分する際、どんな方法を取るべきでしょうか。一般ごみの様に捨てるのはNGです。カルテには患者の氏名や住所だけでは無く、家族歴や治療歴、ライフスタイルについて細かに明記されています。これらが流出すると患者のプライバシーや人権侵害になる可能性だけでは無く、医師法に違反している事になり50万円以下の罰金となります。医師法に違反してしまった医療機関は、患者数の減少に繋がるので致命的なダメージとなります。

医療機関で処分をする場合はシュレッダーにかけて裁断し、廃棄物として処理するのがベストです。個人情報を特定出来ないだけでは無く、廃棄物として処理するので人目に触れる事はありません。外部業者へ依頼する場合はカルテ破棄、またはプライバシーマーク所持の業者へ依頼すると良いです。これらの業者は個人情報の扱いに長けていて、且つ書類溶解や目の前で裁断してくれるプランを容易しています。費用は段ボール1箱に対して平均1~2000円程度です。業者によってはマニフェスト発行を行っているので、自身で取り寄せや発行をする必要が無いので手間が省けます。

個人からの依頼のみを受付している業者よりも、法人対応している業者はこちらの状況を汲み取って対応するので時間・手間をかけません。既に5年以上保管しているカルテ、またはデータ化して不要になった場合を処分すれば物理的にスペースが広くなるので、スタッフが働きやすくなります。

まとめ

紙ベース、電子どちらのカルテも医師法により、診療終了から5年間の保存義務が定められています・レントゲン写真やエコー、特定生物由来製品に関してもそれぞれ期間が決められているので注意して下さい。

データ化についてもいくつかの取り決めがあり、それを満たしていないと保存義務に違反する可能性もあります。保管期間が過ぎたカルテは処分して問題はありませんが、一般ごみではなく産業廃棄物としての処理が一般的です。シュレッダーで裁断するのもよいですが、専門で廃棄を行っている業者に依頼するのもポピュラーな方法です。