院内処方と院外処方どちらがよい?それぞれのメリット・デメリットについて解説

数十年前のクリニックでは診察・処方まで全て同じクリニックで行っていました。しかし近年のクリニックでは診察のみで後は薬局で処方してもらう事も珍しくありません。前者は院内処方と呼び薬価差益が大きいケースに有利でした。しかし、年々この差益が縮小する事でクリニックの利益が減りました。また薬剤師が在籍して処方する事で患者にあった薬の組み合わせが出来ると考え、院外処方が増えました。ここでは双方のメリットだけでは無く、デメリットも合わせて紹介しています。

院外処方とは?院内処方とは?

そもそも院外・院内処方とは何か?クリニック関係者でないとあまり聞き慣れないかも知れません。

元々処方箋は医師が診察し、それにあわせた薬を同じクリニック内で処方していました。クリニック側は差益が生じ、患者側は薬局へ行く手間は省けるというメリットがありました。しかし医療費削減が進み、薬の価格はどんどん下降した事で差益はほとんどなくなり、この差益はクリニックの収入に直結し、運営出来なくなるケースも多発したのです。

そこで医薬分業が盛んになりました。医薬分業はヨーロッパでは800年以上もの歴史を持ち、日本へ伝わったのは明治時代です。この時にドイツの医療制度を取り入れる為に医師を招き熱心に勉強を行いました。しかし1889年に薬事制度された事で、院外処方がメインに戻ってしまったのです。

薬価差益が期待出来なくなった今、緩やかではありますが院外処方が多くなりつつあります。院外処方はクリニック外で処方箋を受け取る手段であり、最寄りに薬局を設けているのがほとんどで、指定が無ければ別の薬局でも処方箋を受けられるのが特徴です。

院外処方のメリット

院外処方のメリットはクリニック側・患者側どちらにも多くあります。まずクリニック側としては医師やスタッフが診察を含む業務に専念できるので、効率的に患者を診る事が出来ます。

薬局では薬剤師が常駐しているので、患者のライフスタイルや習慣をヒアリングして安心して服用出来る薬を処方出来ます。もちろんカウンセリングしながら処方をしてくれるので、不明点を相談出来るのもメリットです。お薬手帳を持っていればこれまでの薬歴簿を確認出来るので、アレルギーの有無を確認出来るのも大きな強みとなります。

薬局とクリニックは独立した施設なので、クリニックでは薬剤師の人件費・調剤関連機器は不要です。診察費で利益をまかなえるので収入面にもメリットがあります。安定した利益は質の良い医療環境を作る事が出来るので、結果的に患者へ貢献する事に繋がります。患者側としては処方箋があればどの薬局でも処方箋を受け取れるので、かかりつけの薬剤師へ相談が出来ます。

特に持病を持っている方やライフスタイルに制限がある場合は、毎回状況を説明するよりも気持ちが楽です。期限内であれば自分の都合の良い時に処方箋を受け取れるのも魅力です。

院外処方のデメリット

一見メリットが多い様に見受けられる院外処方ですが、デメリットも存在します。クリニックが指定した処方箋を勝手に書き換えてジェネリックにする、そのジェネリック自体の安全性が定かではないという観点からネックに感じているクリニックもあります。

また年配の患者はクリニック=院内処方と思っているので、うまく対応出来ない点も見受けられます。患者によっては体調不調の為、クリニックに来ているにも関わらず場所を変更させたり、別途会計をしなければならなかったり面倒だと感じているケースもあるのです。会計が別になるので、院内処方よりも割高になる点は弱みといえるでしょう。

クリニックに良し悪しがある様に、人によっては合わない薬局がある場合もあります。うまく相談が出来ずに処方箋だけ渡される、あるいは処方箋を待っている患者が多いので時間を割いてくれないという意見もあります。近年医療費抑制の動きが活発ですが、その為にはまず院内処方をなくすのが先決ではないか?という意見も出ています。

院内処方のメリット

薬局へ行く必要が無く、体調が悪い時に移動する事の無い院内薬局はそれだけで大きなメリットです。データによると院外処方が6割を占め、少しずつではありますが少なくなってきています。

このケースのメリットですがとにかく薬代が安い点です。一昔前までは薬価が高く、その差額で利益を得ていましたが薬価の値段が下がる事で薬自体の価格も下がり、患者としては嬉しい結果になります。

院内で処方出来るメリットとして「本当に必要な分だけ処方」が出来る点です。海外に比べると日本の薬は比較的弱く効果も緩やかです。しかし長期的に服用していると副作用の心配があります。院外処方の場合は前者に比べて「患者の意見を尊重する」というスタンスである事が多いです。その為、多めに処方箋を渡してしまいトラブルに発展するケースもあります。その分診察内容をすぐに確認出来る、または医師へ直接相談出来る院内処方は、的確な服薬方法について説明が出来ます。

「安全に薬を服用する」点を踏まえると、院外よりも院内に分があります。薬局へ行く手間は省けるので、時間の短縮が期待出来るのもこの手法ならではの強みです。

院内処方のデメリット

患者の体調・懐に優しい院内処方ですが、薬を保管するスペースが必要なのでクリニックによってはかなりスペースを圧迫されます。ただ単に保管すれば良い訳では無く、湿度や温度管理を徹底する為に専門の保管庫が必要です。この保管庫を作るにも費用が発生するので、開業前のクリニックにとっては無駄な費用だと見られる可能性もあります。

近年薬価がどんどん下がっているのでクリニックとしては十分な利益を確保出来ず運営出来なくなってしまうリスクもゼロではありません。クリニックの主な収入源は患者数で、それには処方箋による薬価差益があります。質の良い安全な治療を行う為にはある程度の収入が必要です。これらをデメリットと考える方も多いです。

医師が処方依頼をしているので、患者が希望した薬を処方出来ないのもデメリットと捉えられています。ジェネリック希望が却下される、あるいは量を減らして欲しいのに医師がGOサインを出してくれない。これらの悩みに関しては処方受付で相談をするのでは無く、診察の時点で医師と相談する必要があります。

ジェネリック希望については、薬によってジェネリックがない、あるいは効果や成分が特殊で、このタイプの薬しか受け付けない治療である場合もあります。これらを踏まえて納得のいくまで相談を重ねて下さい。どうしても納得いかない場合はセカンドオピニオンに頼るのも良い手段です。

まとめ

どんなサービスにもメリット・デメリットが存在します。クリニックの処方は院内・院外の二つに分かれます。

前者は昔ながらの方法でクリニック内にて全て簡潔しますが、後者は別に薬局を設けているのでそこで処方された薬を受け取る流れです。院内処方は薬価差益が低く、安価で処方箋を受けられます。患者の顔を見ながら処方箋を調節出来る反面、十分な利益を確保出来ないデメリットも考えられます。

院外処方は患者の意見を聞き入れてくれたり、相談に乗ってくれたりするのが強みです。但しクリニックと薬局を行き来する事になるので時間のロス、また会計が別の為費用が高くついてしまいます。