電子カルテの3原則とは?守らないとどうなるの?

電子カルテのシステム導入の為、打ち合わせをしている際に「電子保存3原則」と言う言葉を聞いた事はありませんか?本来であれば電子カルテメーカーが説明すべき情報ですが、メーカー側も既に知っているだろうと考えて省略するケースもあります。この3原則は真正性・見読性・保存性があり、それぞれ医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに掲載され、各々で確認するのが一般的です。これらのルールを熟知した上で導入する必要がありますが、万が一破ってしまった場合はどうなるのでしょうか。
そもそも3原則が書かれている、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」とは
電子保存3原則について調べていくと必ず出てくる医療情報システムの安全管理に関するガイドラインですが、そもそもどの様なガイドラインなのでしょうか。厚生労働省が定めている取り決めで、名称の通り医療機関で利用するシステムを安全に使う為に必要な知識を記しています。数年に一度改変されますが、ネット上でも無料で確認出来るのでこれから電子カルテを導入検討している方は必ず目を通して下さい。
このガイドラインの7章である電子保存の要求事項についての項目に、3原則が掲載されています。カルテを含む診療記録をデータにする場合、真正性・見読性・保存性の3つを遵守するのがルールです。これらを満たしていない場合は診療記録として見なされず、公的な効果を得られません。
電子保存3原則歯電子カルテだけでは無く、レセプトコンピュータや画像、ファイリングシステムも対象内です。これらを導入している病院は今一度3原則に沿っているか確認してみると良いでしょう。
真正性
電子記録された内容は保存期間中に内容の確認が常に出来る状態にし、作成・消去・変更を行う際にはその責任の所在を明らかにすることが求められます。
そのため誤って他の患者の記録を記したり、消去したりしないよう心掛けなければなりません。当然治療記録を入力、編集した人間が誰か分かる必要があります。その為に電子カルテでは必ずログインが必要で、他にも管理画面で入力・編集ログを確認出来るのも、真正性の確保の必要があるからです。
電子カルテのシステムを定期的にメンテナンスし、アップデートをするのも誤作動を防ぎ真正性を確保する事に含まれています。
真正性の確保を守る為にログインIDの使いまわしや改ざん、アップデートを怠るのは厳禁です。PCの知識に乏しいところではこれらがおざなりになっているケースも散見されます。しかし、これらを放置することは、認められることではありません。システムの導入もとである企業に定期的にメンテナンスを行ってもらうようにしましょう。
見読性
電子記録は表示・出力する際には、分かりやすい形にしておく必要があります。カルテは医師やスタッフだけでは無く、時には患者へ治療計画・方法を説明する時にも活用します。その時に患者が理解出来ないと見読性の確保が得られていない事になり、改善が求められるケースがあるので注意して下さい。
また電子カルテを印刷する事を想定し、プリンタやスキャナと接続している必要があります。保存性の確保と内容が同じになりますが、いくら設備が整っていてもデータが破損している場合は印刷・閲覧が出来ません。データが正常に閲覧・印刷する為にデータのバックアップを取っておくことも、見読性の確保に含まれます。
万が一カルテを保存しているクラウドやサーバーにアクセスが出来ない場合に、バックアップとしてローカルの端末に保存しておくと見読性の確保が守られるので、推奨しているメーカーもあります。
保存性
3原則の最後の保存性です。カルテの保存期間内はいつでも閲覧・復元が出来る状態にしておく必要があります。
紙ベース・電子カルテどちらも診療終了から5年間の保管義務があります。ここで注意して欲しいのが通院を始めてから5年では無く診療終了なので、通院している間は5年経過しても保存しておかなければなりません。カルテ以外にもレントゲン写真や処方箋は3年の保管義務、特定生物由来製品の使用記録は20年間の保存義務があります。罰則やルールではありませんが、感染症や医療ミスによって裁判になった場合にカルテを処分している場合は不利な立場になります。そのため、医師によっては「どんなカルテも永久保存しておくべき。」と考えている方もいます。
万が一の事を考えてクラウド・サーバーだけでは無くローカルPCにもバックアップをしているか、あるいはウィルスにデータ消去されない様に定期的にメンテナンスを行っているかも保存性の確保に繋がります。
守らないとどうなるの?
電子保存3原則を守らなかった場合にはどのような罰則があるのでしょう。それを考えるためにはe-文書法を考える必要があります。
e-文書法とは電子帳簿保存法とも呼び、紙ベースで保存が義務付けられていた法定保存文書を電子データで保存する事を容認する法律です。1998年に施工された法律で、紙ベースの帳簿書類がデータになっただけなので3原則を守らない=帳簿保存法を守らない事になります。
簿保存法を守らない場合は保存義務違反や虚偽の記帳を行ったと見なされて、100万円以下の罰金が科せられます。また保存性の確保には電子カルテの保存義務が生じます。保存期間は診療終了から5年なので、破ってしまうと50万円以下の罰金が科せられるので注意して下さい。
処分の際も一般ごみで捨てるのはNGです。患者の氏名や住所、診療的や家族歴などプライベートに関わる情報が掲載されているので最低でもシュレッダーをかけます。出来れば専門業者へ依頼して裁断・溶解処理をしてもらうと確実です。業者依頼をする場合は機密書類等処理契約書を用いて契約する必要があります。これらを守らないと更なる罰則が科せられる事もあるのです。
3原則で全て網羅できる?
今回、電子保存の3原則をピックアップして説明していますが、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインは膨大な情報があり、その中の電子保存の要求事項についてだけでもかなりの量です。またこれらは最低限のルールであり、セキュリティ問題には特に関与していません。
また、近年では3原則にもう1つプラスして「検索性」を加わえる動きが進んでいます。これは必要なデータを簡単に探し出せる事を指しています。
他にも一定の管理者に権限を付与して管理する可用性。長期運用を見据えてデータの保存場所を確保する、あるいは効率的に業務を遂行する為の運用性。データ運用の為のコストを見直す経済性が、今後は必要では無いかと言われています。
まとめ
電子保存の3原則を簡単に言うと「誰が記入・編集をしたか分かりやすくしておく」「医師・患者共に見やすく管理しやすい状態にする」「トラブルに備えて保管を強化する」事になります。その為にはいくつかの手段があり、医療機関側の努力が必要になってきます。
電子カルテの保存期間は診療終了から5年です。この期間内に破棄・削除をすると帳簿保存法を破る事になり、ペナルティが科せられるので注意して下さい。