クリニックにおける院内感染対策とは?

院内感染対策は、クリニックや病院の大小を問わず、対策が必須です。昨今、院内感染が発生した場合に、クリニックの対策不備等がメディアに大きく取り上げられ、事態収束に時間がかかると共に、風評被害など大きな影響を及ぼします。さらに、クリニック・病院という特性上、患者様との信頼関係が崩れることがあります。安心安全のクリニック運営をするために、ここでは院内感染対策のポイントについて解説します。

院内感染を予防するために綺麗にすべき箇所

院内感染を予防するために綺麗にすべきことをご紹介します。

 

 空気清浄機

院内感染対策で、真っ先に浮かぶのが空気清浄機の設置です。家庭用から業務用まで様々な空気清浄機があります。院内感染対策での導入を検討する場合、高機能空気清浄機の設置をお勧めします。

 

スリッパ

病院やクリニックにスリッパを導入するケースがあります。院内の入り口から感染症対策が必要です。1日に多くの人が、同じスリッパを使いまわすわけですから、適切な管理が求められます。対策としては1足ごとにアルコール消毒をすることもできますが、手間がかかります。おすすめは滅菌のスリッパケースを導入しましょう。ケースの特徴は、紫外線照射による滅菌処理です。クリニックの対策のひとつとして、患者へのアナウンスすることで、信頼向上にもつながります。

 

 雑誌やおもちゃ

院内に雑誌やおもちゃを配置している場合、適宜、消毒が必要です。具体的な方法として、ウイルス殺菌効果の高い消毒用アルコールや次亜塩素酸の使用が効果的です。1時間に1-2回程度の殺菌をルーチンワークとするか、患者が触れたものがある場合、受付へ返却してもらう等の対策が考えられます。

 

観葉植物や水槽

無機質な環境になりがちな院内の景観保持、患者の心身リラックスの向上のため、観葉植物や水槽を設置するクリニックもあります。しかし、院内感染の観点からみると、リスクを否定できません。設置場所としては、子どもが触れることができない位置に限定する必要があります。

 

飾る花の種類ですが、疑似の観葉植物(フェイク)を使用する方が管理しやすくなります。近年、生花と見分けがつかないほどのアートフラワーも存在します。生花を設置する場合、水の交換を1-2日ごとに行い、使用した花瓶等は、水交換の際に新しいものと交換するようにしましょう。

 

トイレ

トイレ清掃は、院内感染防止はもとより、クリニック環境保全のために一日の清掃ラウンドに取り入れるようにしましょう。患者用トイレの場合、ドアノブや手すり等、直接手が触れる箇所のアルコール消毒を行うようにします。手拭き用のタオルの設置は控えた方がよいでしょう。代わりにペーパータオルの導入を推奨します。ジェットタオルは感染症対策として好ましくありません。

 

 診察室

以下、感染対策別に、診察室の環境を整えるようにしましょう。ここでは、対患者との診療行為例を挙げて考えてみましょう。

 

飛沫感染の対策として、マスクの着用が必須です。患者との距離が1-2mの場合に咳やくしゃみ、会話を通じて感染する可能性があります。昨今のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、院内の空調システム(エアコン)等により、部屋全体へウイルスが拡散する危険性もあり、1時間に数回の頻度で、空気の入れ替えが必要とされています。さらに、患者と1m以内で診療行為を行う場合は、サージカルマスクの着用を推奨します。

 

接触感染の対策として、手袋着用など手指衛生(後述)を徹底しましょう。診療行為を行う際、手袋着用前後は必ず手指衛生を行いましょう。

 

空気感染の対策としても、医師及び患者、スタッフのマスク着用が必要です。有床クリニックの場合、同一微生物による感染患者は一つの病室にまとめましょう。また、陰圧室の利用ができる場合は好ましいです。結核が疑われる患者を診察する場合、マスクはN95を使用するようにしましょう。また、当クリニックで診察が行えない場合は、専門医療機関(結核指定病院)への連絡と搬送・転院を速やかに行います。

 

受付

受付と待合室は同じ環境にある場合がほとんどです。クリニックは、多くの人の出入りがある環境です。日常的に管理を行う際に、[1]に挙げた、高機能空気清浄機の導入を推奨します。

 

また、クリニック入口には、患者用にアルコール消毒スプレーを設置しましょう。院内ではマスク着用、診察前に患者の体温計測を求めましょう。やむを得ずマスク未着用の患者が発生する場合に備え、受付にてマスク購入ができるように準備する必要があります。

 

受付では、診察券や現金、クレジットカードのやり取りが発生します。スタッフにはビニール手袋の着用を義務付け、農耕接触が無いよう、現金受取トレイでのやり取りを行いましょう。

 

医療器具

血圧計や聴診器、体温計などの医療器具は患者専用にすることを推奨します。どうしても他の患者と共有する場合は、使用前後に適宜消毒を行う必要があります。

 

さらに、器具によっては使い捨て可能な製品の使用の導入を検討してください。コップやミラーをはじめ、ピンセットやメス、針等は使い捨てがあります。他の患者との使いまわしを防ぎ、院内感染対策として有用です。

 

患者が手を洗わない場合はどうすれば良い?

クリニックの院内感染対策を十分にしても、院内感染対策は万全とは言えません。お客様である患者の協力が不可欠だからです。患者にも正しい感染症対策の知識を持っていただくために、啓発や告知、メッセージを送り続ける必要があります。

 

その大一歩として、「手指衛生」が最も基本的な方法であることは言うまでもありません。現在、COVID-19(コロナウイルス感染症)の感染拡大により、日ごろの感染症対策に加えた対策を行う必要があります。また、世界的にも「手洗いの励行、マスク着用」が常識となっています。

 

患者が手を洗わない場合、またはその可能性がある場合は、クリニック内での院内感染を防ぐために、日ごろのクリニック感染症対策の徹底をする必要があります。「手指衛生」マニュアルを確認し、都度のタイミングで衛生環境を整えましょう。合わせて、患者への「衛生管理徹底へのお願い」等のパンフレットを配布し、次回以降の協力を仰ぐように促しましょう。

▼手指衛生のタイミング(一例)

  1. 患者と接触する際
  2. 清潔な環境へ触れる/入る際
  3. 患者の体液等に触れた可能性がある場合
  4. 患者と接触した後
  5. 患者の携行品に触れた後

 

補足ですが、感染症対策の主な原因は空気感染、飛沫感染、接触感染と言われています。

  • 空気感染:結核、水痘ウイルス、麻疹ウイルス 等
  • 飛沫感染:インフルエンザ、マイコプラズマ、風疹ウイルス、百日咳 等
  • 接触感染:ノロウイルス、多剤耐性菌、腸管出血性大腸菌(O-157) 等

 

院内感染を防ぐために必要な機器や道具

院内感染を防ぐために必要な機器や道具を記載します。

空気清浄機

ポイントは3つです。除菌機能、脱臭機能、快適な環境です。

  • 除菌機能

フィルター性能の高いものを購入するようにしましょう。ミクロレベルでの集塵率が99%以上の空気清浄機は、高い除菌機能があります。設置することで、部屋を除菌することができます。

また、オゾン機能も併せている製品だと、空気清浄機内の耐性菌が発生しにくくなります。さらに、自動除菌機能を合わせることで、空気清浄機内をさらに清潔に保ち、二次感染を防ぐことが可能です。

  • 脱臭機能

空気清浄機にオゾン機能がついている場合、脱臭の効果も期待できます。

  • 快適な環境

マイナスイオンが発生する空気清浄機が多く販売されています。院内の快適な環境づくりに貢献します。

ただし、高機能空気清浄機は導入にコストがかかります。事務方の判断だけではなく、院長を含め話し合いが必要です。

 

フェイスガード・アクリルボード

患者と1m以内での診療行為が発生する場合、飛沫感染防止のためマスクに加えてフェイスガードの着用が必要です。また、受付で患者との仕切りがない場合、アクリルボードなどで飛沫感染を防止する対策が必要です。

 

ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)

COVID-19の感染防止対策でもご存じの通り、クリニック内で患者同士の一定の距離を確保する必要があります。患者が受付で並ぶことがある場合、足元のソーシャルディスタンスを表すステッカーを用意しましょう。また、患者同士が「密」にならないよう、一定の間隔を空ける工夫が必要です。

 

まとめ

クリニックでの適切な感染症対策を行うことにより、安心安全のクリニック運営が実現できます、また、感染症対策に不可欠な感染経路ごとの感染予防策をとることも忘れてはいけません。定期的にチェックや管理を行いクリニックの信頼向上につなげましょう。