レセプト返戻とは?原因と対策、再請求の書き方を解説

医療事務のメイン業務ともいえるのが、レセプト業務です。診療報酬を請求する仕事であり、医療機関の収益にも関わる重要な仕事のひとつ。その請求内容に不備などがあった場合に差し戻されるのが「返戻」です。
「再請求の書き方がわからない」「返戻の原因を知りたい」といった方もいるのではないでしょうか。今回は、レセプト業務の流れなど基本的なことから、再請求の書き方、返戻が生じる原因や対策まで、解説します。
レセプト業務の流れ
まずは、レセプト業務の流れを知っておきましょう。一部医療機関では書面での診療報酬請求を実施している場合もありますが、診療報酬は原則として、オンラインによる請求が義務付けされています。
オンライン請求の場合の大まかな流れは、以下のとおりです。
- 診療情報をレセコン(レセプトコンピューター)に入力する
- レセプトを作成(出力)する
- レセプトの点検を行なう
- 医師に確認してもらう
- 審査支払機関に提出する
審査支払機関に提出すると、確認作業が実施されます。そこでたとえば記載内容に誤りがあったりすると、審査支払機関からレセプトを差し戻される(返戻)ことがあります。その場合には、レセプトを修正したうえで、再提出が必要です。
大レセプトの査定・返戻の違いとは
混同されがちなのが、査定と返戻について。ここでは、両者の違いを見ていきましょう。
レセプトの査定
レセプトの記載内容が不適切であると判断された場合に行われるもの。審査支払機関と保険者が不適切だと判断すると、対価報酬の請求自体を認めない、あるいは減点して報酬の支払いをすることがあります。これが「査定」であり、レセプトは返却されず再請求ができないため、返戻よりも厳しい内容です。ただし納得がいかない場合には、審査支払機関に対して再審査の申し立てができます。
レセプトの返戻
審査支払機関では内容が適切か否か判断できない場合に行われるもの。レセプトが返却されるので、医療機関は内容を精査したうえで修正し、再提出します。再請求は可能ですが、報酬の支払い月が遅れる点についてはマイナスといえるので、できれば避けたいところです。
返戻を実施する機関
レセプト返戻を実施する機関は、次の2つです。
- 社会保険診療報酬支払基金
- 国民健康保険団体連合会
社会保険の場合
協会けんぽ・健康組合・共済組合・公費実施機関などから、国民健康保険団体連合会設置の社会保険診療報酬支払基金に対して、レセプトの再審査等請求が行われます。そして翌月初旬に、医療機関へレセプトが返戻される流れです。
国民健康保険の場合
国民健康保険の場合は、国民健康保険診療報酬審査委員会が審査を行ないます。保険者である市区町村や国保組合によって、審査や支払いが委託されています。
返戻再請求の書き方
社会保険と国民健康保険、そして紙請求とオンライン請求、各ケースにおける再請求の書き方について、以下で解説します。
紙請求(社保)の場合
過去に提出したレセプトの情報を修正しなくてはなりません。その場合、「取消」と「報告」の2項目の記載が必要です。具体的な書き方としては、以下のとおり。
- 「取消」:過去の提出と同じ内容で記載し、報告区分を「2:取消」にする
- 「報告」:正しい内容で記載し、報告区分を「1:報告」にする
オンライン再請求(社保)の場合
オンライン請求システムから、返戻ファイルをCSV形式でダウンロード可能。そのダウンロードした返戻ファイルを修正したら、またオンライン請求システムによって再請求することができます。
紙再請求(国保)の場合
国民健康保険団体連合会設置から、以下の2種類の書類が送付されます。
- 紙レセプト写し
- レセプト写し返戻(調整)内訳書
書き方としては、内訳書の内容を確認したうえで、返戻された紙レセプト写しを修正するというものです。
オンライン再請求(国保)の場合
再請求する場合は、オンライン・紙レセプトのどちらでも可能です。ただし両方で再請求してしまうと重複請求となってしまうので、注意しましょう。
返戻期限に注意
返戻が通知される期限は、社会保険と国民健康保険とで異なります。
- 社会保険:毎月20日
- 国民健康保険:毎月10日
また、再請求が可能な期間についても把握しておく必要があります。レセプトが返戻されたかどうかに関係なく、レセプト請求権の期限は3年間です。起算日は、診療を行なった日から翌々月の1日とされます。
返戻が生じる原因とは
レセプトが返戻されないようにするには、まずはその原因を知っておくことです。
よくある理由としては、以下の3つが挙げられます。
事務手続きに関するミス
最も多いのが、事務手続きの際に生じるミスです。たとえば、番号や記号の入力・記入ミス、署名の不備など。
保険者は同じでも、番号や記号が変更している場合もあります。1か月に1度、最初の受診日には必ず保険証を提示してもらい、内容についてもきちんと確認しましょう。そのほか、受診者が家族の扶養である場合にも注意が必要です。記入した名前が被保険者、または世帯主にあたるかどうかを確認しなくてはなりません。
後日、本人に確認をとるのが難しいこともあるので、日ごろから丁寧にチェックすることが欠かせません。またダブルチェックの体制を整えておくことも重要です。レセプトの書き方に関する担当者のスキルも必要といえます。
柔道整復師によるミス
柔道整復師によるミスも、実は少なくありません。たとえば、患者の症状と施術内容の不一致、診療報酬点数の誤りなどです。
また施術が3か月以上にわたる場合、今後回復する可能性や、施術を継続する効果など、根拠を含む説明が必要だとされています。そのほかにも、さまざまな不備や誤りの対象となる事項があるため、提出前には十分な確認が必要です。
同月に同一負傷名で他の医療機関を受診した場合
柔整療法と医科との併給は、医療法により認められていません。同月に、同一部位および同一の負傷について、柔整療法と医科の両方から請求があった場合には、医科の請求が優先されるのが決まりです。医科で受診している間も、柔道整復師が施術を行なうこと自体は問題ありません。ただし、支払いは自費治療となる点には注意が必要です。
受付時には、他医院での受診や投薬がないかどうか確認しましょう。知らない人も多いので、周知するように院内に貼り紙をしておくなどの方法もあります。
返戻されないための対策
返戻が生じる原因を知ったうえで、どのような対策が必要か考えます。各医療機関の体制や環境によっても異なりますが、ベースとなるのは以下の2点です。
レセプト点検前からしっかり確認する
まずは、日ごろからの確認の姿勢が大切です。レセプト点検の段階になる前から、チェックを怠らないようにしましょう。そのための体制づくりも欠かせません。
保険番号や記号の入力・記入ミス、署名の不備など、そして医薬品に関する内容の誤りが考えられます。医薬品については、たとえば以下のような項目がチェックされます。
- 医薬品の適応症
- 医薬品の投与量・投与日数
- 傷病名と医薬品の禁忌の点検
現在では、診療報酬は原則としてオンライン請求が義務付けされています。そのため、レセプト請求用のチェックシステムを導入するなどといった方法も検討するとよいでしょう。
レセプト業務のスキルアップを図る
レセプト業務を行なう医療事務の担当者のスキルアップを図ることも、返戻を防ぐためには重要です。オンライン請求が主流なのでシステムが充実していることもあり、紙請求と比較すると、そう難しい業務ではなくなりつつあります。
しかしやはり、ミスが生じないように適切に行なうには、レセプト業務や、査定・返戻に関する知識が欠かせません。またそのためには、とにかく経験を積むことが必要だともされています。さまざまな経験をすることで、返戻の原因を理解したり、再請求の書き方を学んだりします。すると、起こりがちな間違いが分かるようになる、ミスに気づきやすくなるなど、スキルアップにつながっていくものです。
まとめ
レセプト業務とは診療報酬を請求するもので、医療機関の収益を支える重要な仕事のひとつ。請求内容に不備や誤りがあると、差し戻されるのが「返戻」です。その原因としてはさまざまなミスが挙げられますが、根底にあるのは確認ミスといえます。
それを防ぐには、チェック体制を整えたり、レセプト請求用のシステムを導入したり、そして担当者のレセプト業務のスキルアップを図るといった方法があります。そのためには、返戻の原因や対策を理解し、再請求の方法や書き方を知るなど、基本的な知識を得ることが大切です。