レセプトって何?レセプト業務のやり方や必要資格について紹介!

レセプト業務は診療報酬が収入の大きな部分を占める医療機関にとって大切な業務になります。多くの件数をこなす必要があり、大変細かいルールもあるため専門的な知識が求められます。高齢化が進んでいる現在、取扱いの件数も増えている医療機関にとっては多くの人材を必要とし、働く人にとってもライフスタイルに合わせて働くことができる医療事務はとても魅力があります。ここではレセプト業務について紹介していきます。
レセプト業務とは?
私たちは毎月、保険料を支払い、病院・クリニックなどで保険証を提示して診察料の最大3割の金額を支払っています。それでは残りの7割の診療費を医療機関はどのような方法で得ているのでしょうか。ここで重要になってくるのがレセプト業務ということになります。
それではレセプト業務とはどのような業務になるのでしょう。
レセプトとは
レセプトとは診療報酬明細書のことで、これに基づいて組合健保や市区町村などの保険者から診療報酬が支払われます。
これは患者様1名につき毎月1枚作成され、大規模な病院では毎月数千枚に及ぶこともあります。また近年、高齢化が進んでいることもあり、医療費の請求も増え、レセプトの作成も増加の傾向にあります。
レセプトを作成するにために
このレセプトを作成することをレセプト業務と言います。医療機関の収入を支える大切な業務ですから、専門的な知識やスキルが必要な業務となります。
診療報酬の仕組み
診療報酬の計算は患者様が窓口で支払った診療費(最大で3割)以外の診療費を診療報酬点数表に応じて10円=1点で換算して保険者に請求をします。診療報酬の価格は公定価格であり2年に1回、中央社会保険医療協議会によって決定されます。
また治療の出来高となり医師の自由裁量に任されている部分が大きく、不正請求などの問題が指摘されています。
診療報酬の内容
診療費は投薬、処置、レントゲンなど診療内容に応じて計算されるのですが、診察料や入院費といった「本体」にあたる部分と、薬代にあたる「薬価」の2種類に分類されています。
また診療報酬は病院、クリニックだけでなく調剤薬局などでも発生いたしますからレセプト業務ができる人材のニーズは高いと言えます。
診療報酬の計算は難しい
診療報酬は病名や疑わしい症状に対する投薬が適切かなど、大変細かいルールに従って計算されます。もしこの計算のやり方が誤っていれば、「減点」「返戻」「請求漏れ」などの対象となり保険者から支払われないことや、不正請求となると刑事罰の対象となるので慎重な業務が求められます。
レセプト業務の手順
レセプトは毎月提出となりますが、期限が決められており、毎月10日に前月分を審査支払機関必着で提出となります。多くの医療機関が電子カルテを利用していることもあり、現在ではオンラインでの請求が原則となっております。それでは業務のやり方を流れに沿ってご紹介いたします。
レセプトコンピューター(レセコン)を使ってレセプトを作成
日々の会計の際にレセコンと呼ばれるレセプトを作成するためのコンピューターに診療内容(コードや品番)を入力していくやり方で自動的に点数の計算をする仕組みとなっています。このレセコンは日々の会計の業務でも役立ち、電子カルテと連動させることも可能になっており、業務の省力化にはかかせないことから多くの医療機関で利用されています。
レセプトの確認をする
提出期限に合わせて作成されたレセプトの内容に誤りがないか、出力されたものを一件ずつ確認していきます。もし誤って提出してしまうと、収入の減少にもつながるので重要な作業となります。
医師にレセプトを確認してもらう
確認作業で記載されている病名と診療内容に整合性がないなどレセプトの内容に問題が見つかった場合、医師に確認をしてもらう必要が出てきます。確認が終わると内容を修正してレセプトの内容に誤りが無くなれば完成となります。
支払機関に提出する
完成したレセプトと診療報酬請求書を合わせて審査支払機関に提出をします。支払機関で不備が見つかると返戻(差し戻し)や査定(減点)といった結果となり収入が減少し、余分な業務時間を費やすこととなるので、ミスを防ぐやり方をそれぞれの現場で日々話し合うことも大切です。
レセプトを作成する際の注意点
それでは提出後に不備がみつかるとどのようなことになるのでしょうか。
診療報酬の請求は医療機関が患者様から支払いを受けていない残りの部分、最小でも7割もの部分を請求する作業ですから、収入に関わる大きな事態となります。この不備には「請求漏れ」「返戻」「減点」の3つの要素があります。
・返戻
審査支払機関から重要な項目で不備がみつかった場合になり、医療機関では審査内容を修正し、再提出をする必要があります。
・査定(減点)
審査支払機関において内容に疑問点があると判断されたときにその項目の部分が減点となります。
・請求漏れ
これは文字通り請求自体が漏れていたということになります。これには医師と会計担当者の伝達不足といったやり方次第で改善できるものもあれば、「指導料」の算定方法の複雑なルールが原因となるものもあります。
レセプトの作成には資格が必要
レセプトの作成業務は医師や看護師のように免許がないとできない仕事というわけではありません。またレセコンの導入が進んでいるため業務を進める速度は確実に進歩しています。それなら誰でもいつからでもできるのでは、と考えてしまいますが、入力をする、確認をするといった作業にもやはり専門的な知識が求められてきます。
入力するなどやり方を覚えるときや確認作業の時はもちろん、不備があった場合には何が原因で整合性が取れないのかなどの原因を探るためにも知識を持って進めた方が知識なく始めるよりは効率よく進めることができます。
医療事務に必要な資格
医療事務に関する資格は初心者向けからさらに専門的な知識やレセプトを作成するやり方を必要とするものまで様々なものがあります。ここでは代表的なものをご紹介いたします。
医科 医療事務管理士(JSMA技能認定振興協会)合格率:約50%
医療保険制度や治療費の計算のやり方、カルテの内容・管理に関する知識、患者様への接遇についてなど幅広い知識を問う資格になります。実技と学科があり、どちらかが合格した場合、合格した科目は半年間免除されます。
医療事務技能士認定試験(JSMA技能認定振興協会)合格率:約85%
診療報酬の基本的な算定ルールや要件の理解度や知識を問う資格で、医療事務に関する資格の中でも合格率が高く、未経験、初心者向けの資格と言えます。
診療報酬請求事務能力認定試験(日本保険医療事務協会)合格率:約30%
医療系の資格の中でも最も難しい資格と言われており、実技試験では外来患者や入院患者のカルテの症例を見ながらレセプトを作成するといった高い専門的な知識が求められる資格試験となります。
医科2級医療事務実務能力認定試験(全国医療福祉教育協会)合格率:約60~80%
診療報酬明細書の作成技能を含む知識や医療関連法規に関する知識の習得度を確認するための認定試験となっています。
各試験概要一覧 | |||||
受験資格 | 試験日 | 受講料(税込) | 試験時間及び内容 | 合格基準 | |
医科 医療事務管理士 | なし | 会場 (奇数月第4土曜日) |
7,500円 (実技・学科) 5,400円 (免除あり) |
学科(1時間)マークシート10問 実技(3時間)レセプト点検問題1問 レセプト作成問題2問 |
学科(85点以上) 実技(各問60%以上の得点かつ合計得点率85%以上) |
ネット | 学科(択一式)50問 実技(択一式)60問 |
70%以上の得点 | |||
医療事務技能士 認定試験 |
会場(奇数月第4土曜日翌日(日曜日)年6回) ※在宅試験 |
5,000円 | 2時間 学科(マークシート40問) 実技(マークシート10問) |
総得点の85%以上 | |
ネット | 学科・実技(択一式) | 70%以上の得点 | |||
診療報酬請求事務 能力認定試験 |
年2回(7月・12月) 日曜日または祝日 |
9,000円 | 学科・実技合わせて3時間 学科(マークシート80問) 実技(診療報酬明細書作成3問) |
公表なし | |
医科2級医療事務 実務能力認定試験 |
年3回 | 7,700円(一般) 7,200円(団体) |
120分 学科(マークシート20問) 実技(診療報酬明細書作成2問) |
原則6割以上の正解で合格 ※問題の難易度により変動あり |
未経験者でもレセプト業務は可能?
レセプト業務では前述のように資格がなければ仕事ができない業務ではありませんが、専門的な知識を必要とする業務ですから医療事務の仕事を目指すのであればある程度の知識は求められます。未経験でも仕事をすることは可能ではありますが、まずは資格の取得を通じて、知識を得ていくことから始めるのも方法です。
医療事務の仕事は高齢化が進む中で日々、ニーズが高まっており、これからますます需要が高まることと思われます。働き方としても、レセプト業務は大きな病院でしっかりと仕事をすることも可能ですし、子育てや介護中などで長時間働くことが難しい人が近所のクリニックや調剤薬局などで仕事と家庭を両立しながら働くなど、それぞれの生活のスタイルに合わせて働くことも可能です。