動物病院を開業する前に知っておくべきことと、開業するまでの流れ

昨今、ペットと一緒に過ごす家庭が増えています。また、ペットのニーズも多様化し、動物病院の必要性が増しているのも事実です。今回は、動物病院を開業するにあたって、必要なことをまとめています。医療現場は毎年大きな変化があります。しかし、動物病院経営にあたって必要なコンセプトはしっかりと決める必要があります。本ページでは、コンセプト決めを含め、必要な書類や資格、立地条件の選定等を紹介しています。

 

動物病院を開業する前に知っておくべきこと

動物病院を開業するにあたって知っておくべきことをご紹介します。

資格

これから動物病院の開業をお考えの事業主の方は、獣医師の資格を取得する必要があります。獣医とは、動物の治療や予防を扱う職業です。

獣医になるためには、高校卒業の資格を保持し、各大学の獣医学部に進学・卒業(6年制)します。日本には約20校あります。その後、国家試験を受験し、資格を取得します。6年間では、実習等を含むため、現状、通信制での資格取得はできません。

一方、獣医のサポート役である、動物看護師であれば、4年生大学、短期大学等で単位取得し、動物看護の試験を受けることが可能です。

 

各種手続き

動物病院を開業するにあたり、各種手続きが必要です。

以下、一覧にまとめていますので参考にしてください

必要な手続き一覧
保健所
診療施設開設届
平面図
獣医師免許証
定款
X線装置備付届
高エネルギー放射線診療装置備付届
診療用放射選照射装置備付届
診療用放射線照射器具備付届
放射選同位元素装置診療機器
診療用放射選同位元素または陽電子断層撮影診療用放射性同位元素備付届
 
税務署
法人設立届
青色申告の承認届
給与支払い事務所の開設届
源泉所得税の納期特例の申請届
設立時賃借対照表
設立時の株主名簿
登記簿
定款
 
区役所
開業届
登記簿
定款

 

客層・ターゲット・立地や設備

動物病院を開業する際、開業主はどのようなターゲットに向けて病院を開業するのかを決める必要があります。地元に密着した動物病院を意識するのであれば、必然的に、地域に根ざした立地に病院を構える必要があるでしょう。一方、ある程度の地域からの客層を想定している場合、交通の便が良く、数台の駐車が可能なスペースを確保できる用地を選ぶことになります。

さらに、周辺の同業他社の営業状況も調べる必要があるでしょう。周辺の病院では対応していないサービスを提供することができれば、その地域での新しい価値として、病院経営の強みに変わります。

さらに、動物病院の注意点として、患者(動物)と飼い主(人)が必ず一緒に通院することを考える必要があります。病院内での人と動物の動きに注意して、病院設計を行いましょう。

 

立地

立地条件を考慮に入れて、計画を立てる必要があります。立地は大きく分けて2つのパターンがあります。

1つ目は駅から近い、町の中心部に構える方法です。利点は、駅から近いので、患者は通いやすく、また、動物病院を発見しやすくなります。一方で、賃料が高くなる、駐車場の確保が難しくなる等の欠点もあります。

2つ目は駅から少し離れた、郊外の立地を探す方法です。利点は、賃料や駐車場の確保がしやすくなります。しかしながら、立地条件が悪くなることで、動物病院へ通いづらくなったり、見つけにくくなる等の欠点もあります。

以上のパターンから、当初の予算、事業計画書等を踏まえた上で、メリットがある方を選択するべきだと思います。

 

動物病院の開業に必要な資金や準備するもの

動物病院の開業に必要な資金や準備するものは以下です。

資金調達

一般的に、開業に必要な資金は約2000万円とされています。全資金を個人資産にてねん出することは難しいかもしれません。そこで、各種金融機関や親族等、資金調達をするのが一般的と言えます。

お金を借りるにあたり、日本政策金融金庫への融資を考えてみるとよいでしょう。しかし、一定額の自己資金を準備した上で、資金調達を考える必要があります。

  • 新創業融資

無担保で保証人なしの融資制度です。金額は1500万円まで融資可能です。しかし、準備している自己資金額によって、融資額が変わります。

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html

  • 新規開業資金

4800万円まで融資可能な制度です。ただし担保または保証人が必要です。

https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html

 

立地・病院レイアウト

動物病院の立地はよく考えた方がよいです。どのような職種であれ、予定している周辺の立地条件、同業他社の数及び営業状況、サービスの提供具合を考えましょう。

また、内部の病院レイアウトを考えることも重要です。外観と内観のコンセプトを合わせたものを考えるとよいでしょう。

外側から見た病院レイアウトは、ただ、美しさやきれいさだけでなく、一目を引くものがよいでしょう。動物病院の広告媒体にもなります。また、内部レイアウトは患者の快適さを生む必要があり、さらには病院スタッフの過ごしやすさに直結します。院内の清潔さはもちろん、くつろぎのスペースを用意し、音楽や照明の度合いに気を配りましょう。

 

経営・事業計画書

事業計画書の提出は、動物病院運営において避けて通ることができません。ひいては、事業計画書を綿密に練ることで、経営の方向性が明確になり、開業2~3年の運営基盤を強化することにもつながります。

まず、「総投資額(総費用の合計)」を算出しましょう。動物病院経営において、初期費用は大きいものです。

 

必要な総投資額の一覧
設計施工費
医療機器購入費
運転資金
不動産費用
備品購入費
薬品
医療材料購入費
宣伝費

 

「総投資額」から「自己資金」を引くことにより、調達必要な資金額が明白になります。

次に、「収支計画書」を作りましょう。開業から4~5年先までの収支計画表を作成することにより、立地・周囲の経済圏との条件や客単価等を考えて立地条件を見直すことが可能です。

 

動物病院を開業するまでの流れ

見出し5つありますが、すべて使う必要はないです。流れを表に最後に纏めてください

開業前・開業後のイメージ

動物病院をどのような病院にするのか、イメージをしましょう。大きく分けて3つのイメージに分けて考えることが大切です。

1つ目は、開業前のイメージです。開業まで約1年の準備期間をどのようにして過ごすのか、準備物や資金の調達等、考えることはたくさんあります。その中でも、「どのような動物病院なのか」「売上目標」は必ず明確に答えられるようにしましょう。広告戦略を考える際、あなたの動物病院のイメージから、戦略を練ることがよくあります。

2つ目は開業後1~2年のイメージです。1つ目に決めた、理想の病院像と売上目標をもとにして、それらをどのようにして達成できるかを考えましょう。

3つ目は5年後(10年後)のプランイメージです。地元に根付いた動物病院になっているのか、拡大をしているのか等、理想の病院を漠然としてもよいので考えておきましょう。

 

開業地の決定・市場調査

上記、病院イメージを決めるのと並行して、病院開業地を探します。また、候補地がいくつか見つかった時点で、周辺地域の市場調査をしましょう。個人でできる範囲は限られているので、調査会社に調査を依頼するのが一般的です。しかし、候補地を決めた時点で、時間をかけて周辺をめぐってみることが大事です。車で回る以外にも、徒歩で来る患者を想定して、歩いてみて下さい。

 

事業計画書・資金調達

物件が決まった時点で、事業計画書を練り上げましょう。動物病院のイメージと合わせて、必要な資金を割り出し、資金調達を始めます。開業半年前までに、自己資金額を確定させておきましょう。

 

契約

契約関係の整理をしましょう。物件の契約や開業にあたっての広告媒体の選定・契約が必要です。一つ目に挙げた、病院のイメージをアップさせるのは広告が重要なカギとなります。手を抜くことなく、じっくりと話し合って決めましょう。また、医療機器や医薬品会社の選定も、この時期に行うとよいでしょう。

 

スタッフ募集

病院規模が決定した時点で、それに必要なスタッフの人数を決めましょう。院長を支えるスタッフは、動物看護師や経営スタッフを雇う必要があります。経営が上向いてから雇用したい、と考えるかもしれません。しかし、必要最低限のスタッフは事前に雇用し、経営を安定させる方が得策です。特に経理系のスタッフは必ず雇用すべきです。経理等の業務で、院長の仕事を圧迫させるのはよくありません。

 

動物病院の開業を成功させるためのポイント

 

病院イメージを練る

上記にも記述しましたが、開業前に病院イメージをしっかりと練ることが大切です。コンセプトをしっかりと決めることで、病院の立地や院内のレイアウト、顧客の種類が変わってくるからです。

例を挙げると、病院の受け入れコンセプトをシニアの犬や猫とします。院内のレイアウトは広く、くつろぐことができ、ストレスを感じないスペースが必要になってくるでしょう。ヒーリングに赴きを置くことになります。

イメージはそのまま、広告にも結び付きます。開業前にしっかりと考えましょう。

 

まとめ

動物病院の開業には、大きなハードルがあります。しかし、必要な項目を1つずつクリアし、開業までこぎつければ、患者とのふれあいを通じた、大きな未来が待っていることも事実です。ホスピタリティを大切に、患者に寄り添った動物病院を作り、社会への貢献を目指してほしいと思います。