動物病院の長い待ち時間を対策して集客につなげよう

大切なペットを動物病院に連れて行くときには、混雑して長時間待たされることはある程度の覚悟をして足を運んでいる人も多いかもしれません。動物全般の病気やケガを幅広く診察する動物病院にとっては、診療時間の予測がしづらいなど、長い待ち時間をつくってしまう原因があるようです。集客のためにはこのマイナスイメージを取り除く必要がありそうですが、待ち時間短縮のためにはどんな対策をたてればよいのでしょうか。

 

動物病院が混雑する理由

 

 

 

 

家族同様に可愛がっているペットの様子がいつもと違って元気がなければ、心配のあまりすぐにでも病院に連れて行って診てもらいたい気持ちになることでしょう。ところが、動物病院に連れて行くとなかなか順番にならず、不安な気持ちを伴った待ち時間は実際の待ち時間よりも長く感じてしまい、イライラと不安が募るばかりです。

 

動物病院でそれほど長い時間待つことになる原因はどこにあるのでしょうか。

 

診療時間が読めない

動物病院では、ネコやイヌだけでなく、さまざまな種類の動物の診療に応じています。症状も数分で診察が終わる軽いものから、検査や緊急の手術を要するような重症なものまで幅広く、1件の診察にかかる時間がまちまちであることが一番大きな要因となっているようです。

 

人間のように診療科に分かれて、それぞれの担当医がいるわけでもないため、予約制を導入しづらく、予約制にしたとしても、実際の診察時間との大幅な差が生じがちになります。

 

来院時に重症化している

目に見えるケガや動けなるほどの辛そうな症状であれば、飼い主さんもすぐに動物病院に連れて行くという判断ができますが、動物たちは人間のように言葉で伝えることができないため、病院に連れて来られたときには重症化している場合も少なくないようです。

飼っているワンちゃん、ネコちゃんたちがいつもより元気がないので、飼い主さんが心配になって病院に連れてきたときには、検査や処置に時間がかかる段階だったりもします。獣医師が1人で対応している場合、緊急性のある病気やケガの患者の診察が優先され、順番が入れ替わることもありがちなため、必然的に長時間の順番待ちになってしまうこともあるようです。

 

動物病院側での対策不足

動物病院側が日々の業務をこなすことだけで手一杯で、時間的な余裕がつくれない場合、『長い待ち時間』に対して何の対策もとれないことも考えられます。また病院によっては、人手不足や経費の問題などで、待ち時間短縮のための対策になかなか踏み出せない状況にあるのかもしれません。

 

しかしながら、不安やストレスを抱えて待っている飼い主さんからすれば、同じ待ち時間であっても、何かしら気持ちを紛らわせることができるちょっとした工夫を感じることができるだけで、『待たされている感』は軽減されるものです。

 

大幅な待ち時間短縮が難しいならば、順番が近くなったら通知をしたり、待ち時間を長く感じないようなサービスの導入など、来院者が減少してしまう前に実行できそうな対策をとる必要がありそうです。

 

 

動物病院の平均的な待ち時間は?

 

 

 

 

緊急性のある症状がない限り、飼い主さんは通常、仕事が休みである土・日曜日に診察してもらえる病院を利用することが多いようです。また、休診日の翌日も混雑する傾向にあり、これらの曜日には長時間待たされることになります。

 

時間帯では、診療開始から1時間後あたりの午前10時~11時あたりがピークとなり、午後は17時あたりが混み合う傾向にあります。

 

各動物病院のシステムや訪れる時間帯によっても待ち時間にも差はありますが、平日30分~1時間、土・日で1時間30分~2時間程度が平均的な待ち時間のようです。

 

待ち時間短縮のための取り組み

待ち時間が長いということは、待たされる動物や飼い主さん側ばかりでなく、医師やスタッフのストレスにもなり、医療やサービスの質の低下や患者数の減少といったマイナスの結果を招きかねません。

 

病院の業績を上向きにするためにも、待ち時間が長いという悪いイメージをなんとか払拭したいものです。実際、待ち時間を短縮するための取り組みをしている動物病院もいくつかあり、評判もよいようです。

 

では待ち時間を短縮するために、具体的にはどのような対策が考えられるのでしょうか。

 

医師・スタッフの増員

獣医師や受付などのスタッフの人数を増やすことで、複数で同時診療を行うことができるようになり、対応可能な診療数を増やすことができるようになります。

 

スタッフが増えれば、混み合う曜日や時間帯に合わせてシフトを組むこともできるようになり、患者さんの待ち時間を短縮しながら、スムーズな診療を実現することもできるようになります。

 

ただし、新たな人材の採用、診療室の増設などで費用が発生することになります。増員することが結果的に待ち時間の短縮になり、病院の業績にプラスになることは期待できますが、人材派遣サービスをうまく利用するなどして、費用の発生を抑えながら人員の確保を考えることも必要かもしれません。

 

予約制導入

動物病院は、そのほとんどが人間相手の病院のように細かく診療科ごとに分かれているわけではないため、獣医さんが実際に診察にかかる時間を予測することは大変難しくなっています。そのため予約制の導入もあまり意味のないものとなってしまいがちですが、そこにひと工夫加えてみてはどうでしょうか。

 

予約後、ウェブサイトからどこまで診察が進んでいるかを確認できるようなシステムを導入し、患者さんには順番が近づいてきたら来院してもらうというもので、待ち時間を短縮には大いに役立ちそうです。さらに予約時にある程度の症状を知らせてもらえば、処置や検査の大まかな目安時間も把握しやすくなり、待ち時間の誤差を少なくできるかもしれません。

 

待ち状況を確認できるサービスは割と簡単に導入できるため、病院だけでなく、いろいろな場面で目にすることも多くなってきました。既に動物病院でも導入しているところも見受けられるようですが、現在ではスマホの普及率も高くなっていることから、それほどハードルは高くない方法です。

 

ただし、飼い主さんの中には、スマホを使用しない方もいらっしゃることから、順番が近づいてきたら呼び出しベルで知らせるなど、不公平感がでないような対策も考えておく必要はあるようです。

 

ネットワーク化

少し規模の大きい病院では、院内の受付、カルテ、会計、薬剤情報をネットワーク化し、診察の一連の流れ自体の時間を短縮することで、待ち時間短縮の効果が期待できそうです。

 

人の手に頼っていた部分を自動化することは、時間短縮だけでなく、結果としてコスト削減にも貢献します。

 

ネットワーク化のためのパソコンの設置や受付管理・カルテシステムの導入など、コストもかかることになりますが、病院の規模に応じて必要なシステムのみ導入することでも十分な効果は得られそうです。

 

さらに効果的な方法の一つに、再来受付システムというものもあります。病院を訪れる患者さんの7~8割が再来患者さんであることから、再来患者さんが自分で受付を済ませるシステムで、自動化することで受付業務をスムーズに行えるようになります。

 

来院日時分散化

混み合うのはほぼ同じような日時に集中していることから、これを比較的空きのある日時に分散させるというものです。

 

緊急時とペットの飼い主さんの都合にもよりますが、調整がつく場合には、混み合う日時を避けて来院していただくようにすることで、待ち時間短縮につなげられそうです。

 

病院のホームページを活用して、混み合う曜日・時間帯、おおよその待ち時間を掲載し、その時間帯を避けて来院してもらえるように誘導します。さらに空いている時間帯に来院された方には、飲み物やペット用グッズなど、サービスの付加で誘導しやすくなるかもしれません。

 

診療数を限定する

スタッフの増員が難しい状況であれば、多少のリスクを伴いますが、1日または時間単位で診療数を減らしたり限定することが、待ち時間を減らす有効的な方法とも言えそうです。待たされることからくるイライラも、常に追われているスタッフ側にとっても、気持ちの面で余裕もできてきます。

 

ただし単に診療数を減らすだけでは収入減にもなるため、これを補うために値上げなどの対策も必要になるかもしれません。値上げによって来院者数が減少するのは避けたいところで、慎重に検討すべきではありますが、待ち時間が少なく丁寧に診てもらえるという、よい評判が定着すれば値上げも納得してもらえそうです。

 

待ち時間を長く感じさせないような取り組みも必要

 

 

 

 

待ち時間短縮のために、スタッフの増員やシステム導入を検討した結果、やはり実行は難しいということもあるかと思います。そんなときには、なるべく待ち時間を長く感じさせないような取り組みで、来院者の方の気持ちを楽にさせてあげることが効果的です。

 

設備の整った待合室づくり

飼い主さんだけでなく、具合の悪いペットにとっても、待っている間はゆったりした空間で過ごしたいものです。待っている人や動物同士が近い距離にならないような工夫だけでなく、飼い主さんにとって待ち時間が苦痛にならないような、居心地のよい空間に近づけることも大切です。

 

飲み物やお菓子などの自動販売機、雑誌の設置はよく見かける光景ではありますが、ペットを連れて来院される方の年齢層も幅広いことから、それらの種類も豊富にしておく配慮も必要かもしれません。

 

さらに小さなお子様向けのキッズスペース、年配の方用にマッサージ機や血圧計を設置することも喜ばれそうです。

 

ネット環境を整える

待ち時間といえば、スマホを見ることがもはや日常的な習慣になっている人は多いと思います。そこで無料Wi-Fiの利用ができることは、長い時間の待ち時間を考えるとかなり重要なポイントとなりそうです。

 

余裕があればスマホ充電器の無料貸し出しサービスや、パソコン、座り心地のよい椅子と机の設置など、関連するものを整えておけば、快適なネット環境づくりにさらに役立ちそうです。

 

お声がけサービス

飼い主さんだけでなく、ペットにとっても混雑している病院の待合室は、知らない人や動物など、ストレスの原因がいっぱいです。長時間近くにいると、感染症も心配になります。そこで来院された方の中には、外の公園に連れ出したいとか、車の中で待ちたいと思っている方も多いかもしれません。

 

そういう方に向けて、スマホを利用して順番が確認できるシステムを導入したり、順番が近くなると呼び出しベルで知らせるなど、お声がけサービスをすることで、安心して待つことができ気分も楽になれそうです。

 

病院外へ誘導する

病院の待合室ではなく、病院外で待つことのできる場所に誘導して時間を潰していただく方法もあります。単に外出していただくということではなく、近所のカフェと提携して、飲み物代を安く提供してもらうなど、待っていることでお得感を得られるような配慮は効果的かもしれません。

 

順番が近づくと呼び出しベルで知らせることができれば、さらにスムーズです。

 

まとめ

動物病院での長い待ち時間を短縮することは、決して解決できない問題ではなく、現状を見直してみると、すぐにでも取り組めそうな対策はありそうです。動物病院は動物の病気やケガを治療することが一番の目的ですが、経営という側面から見ると、集客できなければ存続の危機を迎えることにもなります。

 

ペットブームと言われた時代から、犬・猫ブームを経て、いまだにペットを飼う世帯は増加の傾向にあります。それに伴って動物病院を利用する機会も増える中で、お待たせしない体制づくりは、集客のための重要なポイントといえそうです。

 

家族の一員であるペットが、元気で長生きできるようにと願う飼い主さんたちの気持ちを受け入れる場所として、待つというストレスから解放されるように、待ち時間を短縮するための取り組みと同時に、待ち時間を長く感じさせないような工夫は必要不可欠と言えそうです。